子どもから大人へ②

「生き物が大人になるまで『成長』をめぐる生物学」稲垣栄洋著 大和書房

(「・」は抜き書き、「★」は内容をまとめたもの)

・ゴリラとイルカとどちらが賢いかをどうやって比べればよいのでしょうか。そもそもゴリラとイルカを比べる必要なんてあるでしょうか。どちらが大きいとかどちらが強いとかどちらが賢いとかわかるはずもありませんし、どうでもいいことです。それでも人間は比べたがります。そしてそのために比べる指標を作り出します。それが人間の脳のクセなのです。(p.120)

・生物はバラバラです。バラバラであることが生物の価値なのです。しかし「たくさん」が苦手な人間の脳はそれでは困ります。そのため人間はバラバラな生物をそろえる努力をしてきました。(p.120)

・自然界では一つ一つが異なる存在です。そこには「平均」も「ふつう」もありません。私たちの顔は一人一人が違います。私たちは一人一人がすべて違う存在です。(p.124)

・本当は、この「成長のバラつき」と「能力のバラつき」こそが私たち生物の戦略なのです。(p.128)

・自分のために未来の世代を犠牲にする生物はいません。(p.146)

・一つの生物が何の事故もなく悠久の時間を生き抜くことは不可能です。しかし一つの世代が限られた時間を生き、次の世代にバトンを渡します。そして次の世代はまたその次の世代にバトンを渡していくのです。・・・(略) ただこれだけ、と言ってしまえば、ただこれだけです。しかしそれはつまらないことでしょうか。それはとてもすごいことなのではないでしょうか。それだけでもすごいことなのに、もし、人生に楽しみや心動かされることを見つけられたとしたら、これはもう、とてつもなくすごいことなのです。(p.149)

・親は子供のために、持っているものすべてを惜しみなく与えます。しかし子どもはそれを親に返すことはありません。決して薄情なのではありません。子どもが親からもらったものを返すのは親ではなく次の世代です。それが生物のルールです。こうして次の世代へ、次の世代へとリレーのバトンがつながっていくのです。(p.151)

★「おばあさん仮説」(人間が高度な社会を進化させられたのは実は長生きしたおばあさんのおかげである)
人間は他の生物に比べて子育てが大変かつ期間がとてつもなく長い。そのため人間は子育てをするために「家族」や「社会」という仕組みを発達させた。ここで豊かな経験と、経験から身につけた知恵の宝庫であるおばあさんやおじいさんが「知恵を授けること」という役割を担うようになった。(一人のお年寄りが死ぬことは一つの図書館がなくなるようなものだ)

・・・「子どもから大人へ③」に続く

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